秋の養生〜肺との関係
秋の気配を感じるようになったかと思ったら急激に涼しくなりました。
気持ちのいい風が吹いて、心地よさに身体を預けていたい気分。
長かったあの暑さから解放されて身体がホッとしているのがわかります。
胃腸は負担を強いられていた暑さから逃れ、ようやく本来の活動を取り戻し、
食欲が少しずつ戻ってきて、食事が美味しく感じるようになってきました。
未だ夏の尾を引いて、昼間はまだ暑さが残っていますが、
風も陽射しもすっかり秋。いつまでも夏と同じことをしていると、「肺」を傷つけてしまいます。
東洋医学では「肺」は呼吸器系全般の機能とともに、呼吸を介して外環境を結ぶ「出入り口」であり、
外邪を侵入を防ぐ衛りも担い、体表の皮膚も「肺」の機能の一部となっています。
冷気に急に当たると鼻水やくしゃみが出たり、鳥肌になったりするのはみんな、
侵入しようとする外邪から身を守る防衛反応なのです。
秋はこの「肺」の機能が過敏になる季節です。
また、「肺」が弱くなると呼吸も浅くなり、胸の浅いところでパクパクと喘ぐような息になると
胸の中に息が詰まってしまいます。すると、ため息をしてそれを解消しようとします。
「ため息をつくと幸せが1つ逃げる」って、誰かが言ってたけど、ため息をすると気分が落ちますよね。
肺は愁いを引き起こし、愁いは肺を傷つける。
そして、文字通り「愁」は秋の心と書くように、秋は愁いの季節でもあります。
外にエネルギーを発散していた身体は、エネルギーを内に貯め込むようにシフトチェンジするので、
気持ちも内へ内へと向かいやすく、気持ちが落ち込むと内に篭り、鬱傾向の不定愁訴を起こしやすくなります。
人間の肺は、もしもの場合に備えて常に空気を20%くらい残しています。
ですから、吐く息は常に吸う息より少なくなりやすいのです。
さらに、人間は集中したり力を入れる時息を止め、苦しくなると息を吸います。
吸う息は無意識でもできますが、吐く息は意識しないと疎かになるようです。
しかし、空気交換量は吐く息の量で決まりますから、吐く息が少なければ息はどうしても浅くなってしまうのです。
息が浅くなると、空気交換の低下はもちろんですが、身体に入った力を抜くことができず、
胸や肩、背中の筋肉が凝ってしまいさらに悪循環を招きます。
まず、息を整えることが大切です。
どうせため息になるなら、深々と全部吐き切って、反動を利用して胸を大きく開いて息を吸い込みましょう。
新しい空気を身体に入れたら、肺の機能が上がり、身体中が巡って気持ちを切り替えることができます。
そうは言っても、もうすでに固めてしまった身体で深呼吸をするのは難しい人もいるでしょう。
軽い動作を使うと、楽に大きな呼吸をすることができます。
①まず肘を曲げて、手を肩に。そしてそのまま肩を後ろにゆっくり5回、
肩を回して胸回りをほぐします。
②手はそのまま、肘を顔の前まであげながら息を吸います。
③肩から手を離して、肩に乗った重い荷物を身体の前に投げ落とすように手を下ろしながら、
一気に息を吐き出し脱力します。
※このとき、吐く息に任せて声を出すのも効果的です。
もし、うまくいかなかったら、まず、息をできるだけ吐き出しましょう。
①胸の前で手をクロスさせながら手を肩につけて息を吸います。
②前の方の腕で下の腕を押して、押し出すように息を吐き出します。
息をしっかり吐き出すことができれば、息を深く吸うことができます。
息を深く吐くことができると、身体に入った力=緊張を抜くことができるようになってくるので、
凝り固まった腰や肩のこりをほぐすことができます。
それから、胸元から肩、親指の掌側にかけて、肺のツボが並ぶ流れあります。
ここを冷やしたり直接風に当てると肺の機能を傷つけてしまうので、襟のある長袖やスカーフなどで守りましょう。
急に冷えた夜は、大根のおろし鍋やスープいかがでしょうか。
白い食べ物は、「肺を潤して咳を止める」と言います。
大根は、上逆して胸に詰まった気を巡らせるので、咳、痰、ため息、のどの詰まりによく効きます。
しかし、長く加熱してしまうと、せっかくの栄養が逃げてしまうので、生食がいいのですが、
この時期生で食べると、身体が冷えてしまいます。
ですから、鍋の最後にどさっと大根おろしを入れて食べるおろし鍋にすると、
身体を温め、大根の栄養素をたっぷり取ることができます。
お出汁はできれば鶏出汁にすると、夏に消耗してしまった気を補ってくれます。
また、冬瓜は夏に溜めてしまった余分な熱と水分を排出して、身体のむくみを取ります。
そしてカリウムを多く含有するため、夏バテの原因となるカリウム失調を解消して、
だるさや疲労感、などの緩和に役立ちます。
脾胃を整え、肺熱をとって咳や喘息を抑えるお豆腐をプラスして、
冬瓜と豆腐のスープやあんかけなども今の時期、とても効果的に肺を補い潤すことができます。
しかし、冬瓜は身体を冷やすので、生姜など身体を温める作用の食品を加えて火をしっかり通したお料理にしましょう。
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